低ニトロ・低オイルグロー燃料 推進

MSB 日本科学模型安全委員会
 日本科学模型安全委員会では,かねてより低ニトロ・低オイルグロー燃料の普及に心掛けていますが,なぜ低ニトロ・低オイルグロー燃料なのでしょうか?
 模型と実車(ガソリン車)を比較してみますと,メタノールとガソリンの違いこそあれ,排気ガスの成分は一部を除き,ほとんど同じ成分が排出されております(当委員会は過去3年間に4回,排気ガスの成分分析を行いました)。模型と実車で異なるのは,グロー燃料には異常に多すぎるオイルとニトロメタンが添加さているということです。添加されている理由は読者の皆様も十二分にご理解のことと思いますが,これらがどのような弊害をもたらしているか,ご存じない方が多いのではないかと思います。
 異常に多すぎるオイルは,燃焼せずに飛沫となって機体,パイロット,その他近くにある諸々の物に付着します。もちろん地面にも飛沫しますので,芝生や草にも付着し,植物が光合成等の成長する要因を妨げ,枯れさせます。特にヘリコプターの場合,ホバリング時は一定空域に停止状態になりますので,この傾向は増大します。愛好家の方であれば既にお気付きのはずだと思いますが,かなり多くの飛行場で芝生や草が枯れているのを見かけます。皆様の飛行場はどうでしょうか。これが原因で飛行場として使用できなくなり,大変お困りになっている方からの報告も当委員会に入っております。
 現に本年のF3C日本選手権の会場は,一部の芝生が枯れはじめ,市役所からのご注意により,F3C日本選手権開催時には静演技の空域部に『ビニール』等を敷いて挙行されると聞いております。大変情けないことですが,愛好家の皆様はどのようにお考えですか?
 このことからしましても,『ラジコン技術』等で簡単にご紹介しました,日本模型航空連盟が来年度からのF3A・F3C日本選手権時に燃料内のオイル規制くを実施すること(10%以下の低オイルを義務づける),そしてJMRCAのニトロメタン規制を行うという大英断を高く評価するものですし,当委員会は全面的にこれを支援していくことを決定しております。なお当委員会では,先の会合で低オイル・グロー燃料の定義付けを決定し,今後はオイル分が容積率で10%以下のものを『低オイル・グロー燃料』と呼ぶことにいたしました。この点はぜひ皆様のご理解をいただきたいと思います。
 他方,ニトロメタンは過去4回の調査から,実車よりはるかに多い比率(排出量は実車の方がはるかに多い)の窒素化合物を生成させると考えざるを得ません。ニトロメタンの含有量が多くなればなるほど,窒素化合物は多く生成される傾向にあります。気筒容積がはるかに小さい模型エンジンですので,地球規模での環境破壊という観点からは大きな影響は与えないと考えられますが,排出量が少なくても,空域や走行(航)が限定されているラジコン模型では,動植物への影響が懸念されます。エンジン始動時に,観客もしくは人がいる方へ排気させている愛好家をよく見かけますが,風向もあるでしょうが,ぜひ気をつけていただきたいものです。
 模型や実車の排気ガスの成分には,人体に有害なその他の化学物質も存在しますが,大きく異なるのは前述した2点です。当委員会は,この2点から低ニトロ・低オイルグロー燃料を強く推奨することになりました。『ラジコン技術』や当ホームページで低オイルグロー燃料の利点を多々述べ,低オイル燃料を使用した人の体験談が掲載され,また反対の方の多くのご意見を拝聴しましたが,どちらの主張が正しいのかを議論するのではなく,『環境と我々の身体』のことを第一義に考えるのが当然だというのが,日本科学模型安全委員会の主張です。そのうえで,不都合があれば,エンジンメーカーの技術開発力に期待したり,愛好家の方々の創意工夫で不都合を解決すればよいことです。
 高温多湿の夏にどうかという心配や高地ではどうかという疑念を持つことは十分理解できますが,申し述べたように解決の道はいくらでもあると思います。環境問題に敏感なヨーロッパでは,2サイクル・エンジンが使用できない地域があると聞いておりますし,ニトロ化合物は環境の面から多額の関税が付されているそうです。ヨーロッパの選手がどの種目でも,日本の選手よりも低ニトロで低オイル(12〜13%)の燃料を使用しているのが良く理解できます。
 最後になりますが,現在市販されているエンジンは,従来の燃料に対応し設計されているエンジンですので,必ずしも低オイル・グロー燃料に対応できるものとは限りません。現に某エンジン・メーカーの絶大なご協力のうえ,不具合のご連絡に対処しておりますので,本年の日本選手権に低オイル・グロー燃料を使用する選手が出現するものと思います。低オイル・グロー燃料を使用し,不具合がある場合は当委員会までご連絡ください。
 また,既存の燃料メーカーにも趣旨をご理解いただいておりますので,近々低オイルグロー燃料も発売されると思いますし,発売予定とのうれしい報も入ってきております。こうしたメーカーとご協力でうえ,低オイル・グロー燃料の普及に全力で臨みたいと考えております。そしてその次は,低ニトロへ!!


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